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2013年 03月 30日
iPhoneにみる市場の成熟過程
携帯売り場の者ですが、iPhoneが本格的にヤバいです

という記事を読みました。

要約すると、

iPhone5にインパクトがなく、売れない。
Androidの方が売れている。
Androidの方が売れるのは、機種が多く、選択肢があって多様なニーズに答えることができるからだ。
iPhoneがスマホの絶対的な王者に返り咲くことはないだろう。

ということです。

おそらく、この書き手の売り場に限らずに、全体として上記の通りなのだろうと想像します。
ただし、アップルの製品数が少ないことを批判している点には同意できないですが。

一言で言えば、「スマートフォン市場が成熟化した」に尽きると思います。
ビジネスの書籍でよく「市場の成熟化」という言葉を目にしますが、スマートフォンのここ数年の状況を見て、「市場が成熟していく過程」を消費者として実感できたように思います。

私のスマホ歴について書くと、スマホデビューはIT業界の人としては少し遅れてiPhone4が出る少し前くらいに3GSを買いました。当時、キャリアの選択肢はソフトバンクしかなく、学生時代から使っていたauから乗り換えました。その後、auがiPhoneを取り扱うようになった時、ソフトバンクが4Sに「実質無料」で乗り換えられるキャンペーンを始めました。iPhone4や4Sを見て、欲しいなと思っていた私は早速それにのりました。
使ってみると、やはり3GSに比べて画面はきれいだし、薄いし、早いし、バッテリーが持つ時間も伸びました。

その後、モバイルルーターを使えるようになったこともあって、ソフトバンクを解約して、電話はウィルコムになりました。それでも、iPhone4Sはいつもポケットに入っています。WiFiが使える家と会社ではもちろん、外でも主にカメラとメモ帳として使っています。

iPhone5が出た時、気にはなりましたが、iPhone5を使っている人のものを見せてもらって、特段欲しいとも思いませんでした。リアルでネットで見聞きする限り、iPhone5がよく売れているという話は聞かないです。新しくスマートフォンを買うにしても、5でなければならない理由はない、というのが大方の見方です。

先に紹介した携帯売場の話で言えば、アップルにとって一番の問題は、iPhoneの種類が数が少なくてニーズにこたえられない、ということではなくて、iPhone5と4Sが同列になってしまっていることだと思います。

ノキアなどもありましたが、現在「スマートフォン」と呼ばれているカテゴリーはアップルのiPhoneから始まったと言ってよいでしょう。

これをレースに例れば、ジョブズがiPhoneの発表をした日からスマートフォンのレース大会が開幕したわけです。その時、走っているのは初代iPhoneのみ。スマートフォンがほしい、という人はとにかくそれを買うわけです。一人しかいないので、当然の一人勝ち。

その後、Androidもエントリーされ始めますが、全く勝負になりません。みんな、アップルの新機種である、3GSや4、4Sの車(機種)の走りに夢中です。なんて速さだ!(薄さ、画面の美しさ、処理の速さ、ぬるぬる感など)。観客は後継機種を圧倒してみせる姿に魅了されました。私もその一人でした。

ところが、Android勢も段々侮れなくなってきます。ぶっちぎるiPhoneと団子状の数えきれないAndroid勢(あとノキアとかWindowsPhoneとかも)。先頭を行くiPhone5は、4Sとあまりかわらず、それほど差が見えない。部分的なところ(カーブのテクニックとか??)では、Android勢に負けてすらいるようになります。

確かサーバのメーカーの人の話だったと思いますが、
「お客さんに、『もっと性能をアップしてくれないと困るんだ』と要求され続けているとき、現場は大変だったけど、その当時一番利益が出ていた」というツイートを読んだことがあります。
なんだかしみじみします。

※ただし、2013/03/30現在 iPhoneはまだまだAndroid勢より使いやすいと思います。


iPhoneはこれからどうなっていくのでしょうか。
おそらく2,3年でOS間の差異はほとんどなくなるでしょう。その時、iPhoneを買うことに対するまなざしは、現在高級車を買うことに対するまなざしに近くなるのではないかと思います。

スマホは何を使っているのかと聞かれて、おもむろに数千円のFirefoxOSのデバイスを取り出して、ウェブアプリが充実しているしこれで十分、という方が、高額もしくはキャリアの縛りのきついiPhoneを買うよりずっと「クールだ」と言われるようになりそうです。その時、別のものにお金をかけているはずです。スマートフォン、タブレットの次の。

アップルとしても、成熟した市場で今の利益率を維持できるはずがないので、その「次」でも存在感を示せるか、が勝負になるはずです。「次」は、ウエラブルコンピュータと呼ばれる分野でしょうが、ヒットするのはグーグルグラスなのか、スマートウォッチなのか、あるいは別の製品なのか誰にもわかりません。

そして、その分野で勝てなければ、大規模なリストラが待っているわけです。

iPhoneが売れなくなるとか、次の市場でうまくいかなければリストラが待っている、なんて書くと否定的に取られるかもしれませんが、これは当たり前のことだと思います。市場は変わりゆくものだし、挑戦には失敗がつきものです。

ただ、日本では当たり前ではないようで、新しい市場への挑戦もせず、利益を出せていないのに、高給取りをリストラできず、追いだし部屋なんてものを作っているようなのですから。
by taiji_nakao | 2013-03-30 13:14 | ITのこと
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