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2007年 09月 17日
鶴見俊輔集 5 現代日本思想史(1)
 読みかけ。いつも、連続もので書こうとすると(1)か(2)で終わってしまうが、読んでいる途中で書けば、連続ものでもちゃんと終わりまでかけそうだ。

 この本は講義の内容を活字にしたとあって、読みやすい。とはいえ、ぱーと読めるタイプでもないので、もう読み始めて4ヶ月くらいになる。鶴見俊介は、佐藤忠男の独学でよかったで紹介されていて知った。紹介にあったように、この人は、やさしく落ち着いたまなざしをもって対象を見ていて、安心して読みすすめられる。

 とはいえ、内容はなかなかにしんどい。今日は、戦後日本の大衆文化の、占領-押し付けられたものとしての米国風生活様式、占領と正義の感覚について を読む。
いつも、読書室は近所のバーミアンで、ドリンクバーは飲み放題で、しかもお茶がそろっていてありがたい。

 特に、戦争裁判の項が重い。表面をちょっとだけ触れただけの事しか知らなかった。

 今まで読んできた本(吉田茂とサンフランシスコ講和条約、戦後日本への出発)の内容からすると、

*天皇は自ら戦後(少なくとも数年間)も君主だと思って振舞っていたこと。
*戦後も、政府は可能な限り「国体」を守ろうとしたこと。

ということらしい。
これは、最近まで知らなかった。

そして、戦争裁判。
普通に考えると、国際法を犯した、不当な行為をした人物が処刑されるもののはずだけれど、ここでは、「戦争犯罪」なるものまで追及された。

逮捕された日本人総数1万人。
有罪4253人
死刑1068人(!)
無期禁錮422人
有期禁錮2863人

当時の一般的な心情としては、
*天皇が裁判にかけられなかったことに安心した。
*一方で、紛れもない最高責任者が責任を追及されていないことから、裁判の目的「平和と国際法を守ること」はタテマエであり、死刑になった人たちは見せしめで、運が悪かった。と感じた。
*とはいえ、何より当時は食糧不足で食べることに精一杯だった。
*日本人の心性として、戦争裁判は避けることのできない自然の災害かのように受け入れられた。

一方、当時の進歩派の、左翼系の言論のひとつの「七つの首」(七つの首はやがてしめられるであろう、から始まる。7つとは、裁判で死刑になった指導者7名をさす)などを読むと、さながらフランス革命を気取っているようである。とても悲しくなる。
結局、右とか左というのは、文字通り、単に右と左の違いなのであり、どちらが理想主義とか、そういうものではないのだ、ということを知った。

ところで、この裁判は不当だとしたインドのパル判事の「この法廷で起訴された人たちは全員無罪釈放であるべきだ」という意見もあった。そして、この主張が翻訳されると「日本無罪論」になってしまった。。そして、60年代に入って、その延長線に「大東亜戦争肯定論」という主張まででてくる。
本当に、たとえばインドネシアの人たちに向かっていえるのだろうか。(のエントリーの最後。参考)

***

東条英機は、裁判において最後まで一貫して自分が正しいことを主張しつづけたらしい。
そして、辞世の句に、

あすよりは 誰にはばかるところなく 
 弥陀のみもとで のびのびと寝る

と詠んだという。

東条英機からすれば、自分は日本国の為に闘ったのであり、正当なものであったという信念を変えなかった。だから、後悔にさいなまれることなく死を迎えることができた、という心境であった。

***

若くして(なんと23歳、私より年下)、死刑となった憲兵軍曹の辞世の句、
死刑場に連れて行かれる途中で川を見て、付き添いの人に

「ホッとした。これで気がせいせいした。なぜだか知らないが、非常に自分はうれしい。私は生きる喜びをはじめて知って嬉しい。ただ皆と別れるのが悲しい。」
と言った後、

この川は
 どこに流れる
  川ですか

と残した。

***

それで、結局、戦争中の政治責任に関しては、運の悪い人たちがつかまって責任をとらされたという考えと結びついた、ぼんやりとした不信の念が残った。

******

複雑だ。
裁判で身内が殺された人にとってみれば、日本は戦争責任をとっていない、と公然と批判されることは、とても、理不尽に聞こえるだろうし。

歴史は、経験した人によって違うものと認識されている、という事実をまず確認する必要あり、と思った。その上で、いかに共通の歴史、物語を共有できるか、ということ。しかし、それはとても難しい作業で、せめて、その物語から、相手の心情をできるだけ排除しないように。
「運命は我々を隣人にした」(フィリピンのロハム代表のサンフランシスコ平和条約での言葉)
のだから。
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by taiji_nakao | 2007-09-17 21:45 | お勧めの本
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