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2005年 03月 03日
死体
 今日、生まれて初めて、死体を見て、触れた。

 友人が発見し、偶然そこへ居合わせた私は、見ないでおこうと思っていたが、警察が来る前に、怖いもの見たさに、見に行った。

 そこは、壊れかけの家の一室で、ソファーの上に彼は寝転んでいた。

 その部屋には、厳然とした空気があった。


 まだ、死んでいるかどうかを確認したわけではないという。

 私は恐る恐る、手首の脈があるあたりに、2本の指を添えた。

 硬かった。冷たいというよりは、温かくなかった。(後から気づいたことだが、これは久しぶりの「人と触れた」機会だった。)

 彼は、やはり死んでいた。

 その部屋には、厳然とした空気があった。

 私は、手を合わせ、魂が安らかになれますようにと、冥福を祈った。

 毛布をろくにかけていない。襟も開いている。

 どういう事情かは知る由もないが、寒いとか、そういうことはどうでも良くなっているような心境だったのではないか。寒さをしのごうともがくなら、まだ手段はあるように思う。それとも、病気などによって、精神が欲しても、体が動かなかったのか。

 しかし、彼の、、やせ細り、ぼろぼろの歯をした口ではあったが、その姿は、厭世的なものではなく、やはり、厳然として、、そこにあった。

 **

 その部屋を出て、友人のいる辺りに戻ったとき、ちょうど警官が到着した。

「こんにちは」という挨拶は無視された。

まあ、そういうもんかな。

世界中におそらくたくさんある、路上の死の一つを偶然見た日。

それを見たのは、何かの「縁」なのだろう。

私は彼の冥福を祈るばかりである。
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by taiji_nakao | 2005-03-03 23:16 | エッセイ
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