2012年 10月 20日
自転車の後輪がガタガタになってしまって、本当は千里山を超えて緑地公園を下り部屋に戻ってから京都に行く予定が、ガタガタして常にブレーキ状態の自転車に力つきて、そのまま阪急に乗って京都に行くことにした。
それで、時間ができたので、南千里の田村書店で本を物色して目についたのが、川上未映子のヘブン。 どうしようもなく虐められる、中学生のお話。 ちょっと読むのもげんなりするような場面もちらほらある。ここに書かれているようないじめも存在するのだろうなとも思う。 小説で特徴的なのは、同じクラスに酷く虐められている男女が一人ずついて、密かに手紙をやり取りしたり、夏休みには「ヘブン」にデートに行ったりする。 この二人の物語だと思って読んでいたのだが、最後、女の子がどうなるかわからないで終わる。 これはあくまで、主人公である僕の物語なのだ。 物語の形式通り、主人公の僕は異界へ行き、そこからこちらの世界に戻ってきた。 終盤、虐める側に回っている一人がものすごい極論を言う。みんな、利己的に生きてるだけなんだから、お前もなんとかしたいと思うなら、自分でなんとかしろよ。おれは、お前に酷いことをしているとは思うけど、そのことを何とも思わない。お前のことは知らないよ。みたいなことをいう。 この種の理屈は、私も考えたことがある。これはもしかしたら時代性なのかもしれない。 自己責任論。ちょっとこの中学生頭よすぎだろ、と思ったけど。。 2人で理不尽な状況を耐え、ともに闘っている同志と無言で励まし合っているさまは、自己責任論を振りかざす男子に対して、そうじゃないんだ、弱いものが助け合うのが世の中なのだ、と主張しているようにも思える。 でも、その彼女は自滅の道を歩んでいき、そして僕も一緒に来るように手招きする。 とても重要なことは、一番最後いじめが発覚した時、初めて登場したかのような主人公の義理の母親が、主人公をこちらの世界に引き戻したことだと思う。 私はあなたが言うことしか信じないから、と言って。 そして、ちゃんと気持ちに理解を示した上で、控えめながら建設的に生きることを提案する。 生きるということは極論でないことや、そのほか大切なことをわかっている大人。 阪急の河原町の駅のベンチで最後まで読み終えて、つくづく、そういうことをわかっている大人になりたいなと思った。
by taiji_nakao
| 2012-10-20 01:47
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