2007年 09月 08日
アランクーパーという人を知らなかった。
知り合いの家にあったこの本を借りてきて、初めて知る。 面白い。 この人が口を酸っぱくしていっているのは、「コーディングする前に操作デザインをちゃんとやりなさい」ということである。 それはつまり、実行する前に計画をちゃんとしなさい。計画段階ならば変更にコストがかからないのだから。という、普遍的な真理に基づくものだ。 だがしかし、完成品が完成するまで目に見えないものだけに、事前にこうこう、こういうものですよ。いや、こうこうのこうは、こうのほうがよい、という議論がしにくいし、ほとんどされないまま、コーディングが始まってしまう・・ 研修で初めて、「機能一覧」なるものを見たとき、とても違和感があった。あの一覧をみて、「これなら大丈夫」だと本当に思えるだろうか。これもできて、これもできて、これもできて、と考えるよりない。しかし、あれもこれもできることと、これが「使いやすい」ことはまた別である。 では操作デザインをちゃんとやるにはどうしたらいいのか。 まず、コンセプトをはっきりさせなさい。という。 そこで、「ペルソナ」という手法を紹介している。そのサービスを使う、「具体的な人」を想定しなさい、というものである。そして、その人だけを満足させる方法を考えなさい、と。 もちろん、ペルソナは複数(2,3人くらいまで)いることもあるが、少ないほどよい。 そして、コンセプトは必ずしも、実務的なことだけない。人間というものには、感情があるのだから、その本質を見誤るな、という。このあたりは、野中郁次郎の知識創造の方法論の、コンセプト論と近いと思った。 ** 筆者は、コンピュータは2つの特徴を指摘しているといえる。 1点めは、人間の感覚とずれがあること。 2点めは、にもかかわらず人間は感情を持って対応してしまうこと。 1点めは、クーパー流に言えば、人間はファイルシステムの思考で考えない。キッチンに行って、迷うのはせいぜいどの棚をかけるか、くらいなものである。Aという名前の部屋のq棚の、r引き出しの、K番目の入れ物に入れておく、などと考えない。 ペンを使っていてインクの出が悪くなったら、振ったり、あるいは下向けにおいたり、インクを入れ替えたり、あるいは別のペンを使うか、買いに行くかする。 Bという部屋のs棚の、p引き出しをあけて、インク設定を「より濃く」に設定したりしない。 つまり、コンピュータの都合でシステムを作りなさるな、ということである。ファイルシステムで管理するのはいいが、保存したらもっと視覚的に見やすくして欲しいし、アプリケーションである動作が止まったら、その場で設定を変えられるようにしてほしい と人は思っている。 逆にいうと、時代の流れで、人はそこまでやってよと願っている、ということだ。 そして、ユーザはそう要求してしかるべきだ、ということ。 2点めは、道具でありながら、高度な処理をしてくれるがゆえに、人間のように感じてしまうものだという。だが、この感覚を覚えるは大体、ネガティブなものである。 クーパーは、それゆえ、コンピュータは礼儀正しくあるべきだ、といっている。 こないだ、東海Expressの会員登録をした。これをすると、新幹線を事前予約すると安くなる。ところで、この登録システムはひどかった。 何せ記述項目が多い。郵便番号を入れたら住所くらい出してほしいし、会社のも入れなければならない。そして、やっとかけたと思ったら、エラーです、と。どこがエラーかよくわからない。一応、赤字の解説はあるけど、何度かやると変わったりする。結局、何度も書き直した挙句、キャッシュの時間切れになって、やり直し、。 「コノヤロー」という感情を持った。その日は、登録しなかった。 ところで、これがJRの窓口としたらどうだろうか? 「こちらにご記入ください」 「はい、書きました」 (しばらくして) 「いくつか誤りがあります。書き直してください。」 「はい。」 「まだ、だめです」 「はい」 「まだ、だめです」 ・・・ 「はい」 「時間切れです。」 「!!」 こんな窓口対応やってたら、潰れますよね。。 でも、そういえば、お役所も以前は(今も?)こういう対応だったと考えれば、コンピュータの対応も途上段階なんでしょう。 もし、このシステムが礼儀正しさを求めるなら、記入して出されたのを突っ返す際には、 申し訳ありませんが、直してくださいという姿勢で、 間違った個所だけを抽出し、 間違いの原因を調べわかるなら ×となっておりますので、○に直してください。 と書き、特定できないなら、 △や□の原因が考えられます。くらいは、かける。 そして、キャッシュ切れが近づいたら、全力でデータが消えてしまうのを阻止すべきだ。 わかりやすい警告で伝える必要もあるし、まあ、データを仮保存だってできる(かも)。 とにかく、コンピュータは合理的なのだから、それに従わない人間が悪いというとか、そういうのではなくて、サービスを受ける際には人間としてみてしまうのだから、「礼儀正しく」あるべきだし、そのためには、作成者がそういう気持ちを持って作らないとだめだろう。 せっかく、記入してもらっといて、突っ返して、そのうち時間切れ、って、礼儀知らずにもほどがあります。 それから、著者の「礼儀正しさ」を見ると、日常的につかうコンピュータの場合、繰り返し使うことに対してはあらかじめ準備して欲しい、ということのようです。 何度も使っていくうちに、その機能へのアクセスが早くなる、つまり設定がかわる。ということですかねえ。「おせっかい」にならない程度に。 技術より、操作性だ。 ということは、頭に叩き込んでおこう。
by taiji_nakao
| 2007-09-08 15:33
| ぷろぐらま
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